大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)1762号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人吉田正之の上告趣意書は末尾に添えた別紙の通りであるが、原審が控訴申立が被告人父瀬戸重義においてされたことを不適法として控訴を棄却したのに対し、論旨は、被告人自身に控訴の意思があったのだから、たとい被告人が成年者であり申立名義人が父であっても、適法な控訴申立として取扱うべきである、と主張する。しかし旧刑事訴訟法第三七八条の規定上法定代理人でない父に上訴権のないことは明白であって、本件控訴は不適法と言わざるを得ない。論旨は原判決のこの解釈を形式論理的と非難するが、もしこの場合に父の上訴権を認めるならば、被告人にその意思がある以上父とは言わず親族友人その他たれからでも上訴を許さねばならぬ結論になるのであって、それは訴訟制度の根本をくつがえすものなのである。論旨の引用する当裁判所大法廷の判例は全く問題を異にするものであって、論旨は理由がない。

よって旧刑事訴訟法第四四六条に従い、主文の通り判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例